2025年7月25日(金)〜27日(日)
新国立劇場 オペラパレス

振付・舞台・衣装
アレクサンダー・エクマン 

音楽
ミカエル・カールソン 

歌唱
カリスタ・“キャリー”・デイ

ABOUT

6万球の緑の雨が降る
パリ・オペラ座の話題作「PLAY」がこの夏、東京に

コンテンポラリーダンスシーンで一際輝く個性を放つスウェーデン出身の振付家・Alexander Ekman(アレクサンダー・エクマン)がパリ・オペラ座バレエ団のために創作した「PLAY」。2017年の初演以来、驚きの連続の舞台でオーディエンスを興奮の嵐に巻き込み、賞賛され続ける話題作の最新版が、2024年12月から2025年1月、ガルニエ宮で再演されました。

2024年パリ・パラリンピック開会式の演出・振付監督で一躍世界中の注目を集めたAlexander Ekmanが振付・舞台・衣装を手掛けた「PLAY」。Alexander Ekmanが「子供の頃は当たり前のように遊ぶことを楽しめたのに、大人になるにつれて遊ぶことをやめてしまい、少しずつ苦手意識がでてくることに疑問を投げかけ、私たちが “遊び”とどのように向き合いたいのかを考えるきっかけになる作品を作りたかった」と言うように、第一幕は、子供時代を彷彿とさせる自然な“遊び”、それとは対照的に第二幕では大人になって“遊び心”を失い、真面目なルーティンに疲弊する大人の世界を表現。

ダンサーたちが繰り広げる、縄跳びやゴムボールなど様々な遊びの小道具を使った創造的で生き生きとしたエネルギーに満ちたパフォーマンスは、観客を驚きと歓喜の渦に包みながら、深遠な問題を突きつけ、“気づき”を促してくれます。

振付・舞台 Alexander Ekmanをはじめ、音楽 Mikael Karlsson(ミカエル・カールソン)、衣装 Alexander Ekman、Xavier Ronze(グザヴィエ・ロンズ)、照明 Tom Visser(トム・ヴィッサー)、歌唱 Calesta “Callie” Day(カリスタ・“キャリー”・デイ)は前作から引き続きステージを構成する大切なパートを支えています。

そして今夏、パリ・オペラ座の名作「PLAY」が、アーティスト、スタッフ、オペラ座バレエ団のダンサーたちと共に日本へやってきます。このコンテンポラリーダンス「PLAY」は、誰の心にも潜んでいる、無邪気に遊ぶ、体が自然に踊るような“PLAY=遊び”感覚を呼び起こすきっかけになることでしょう。

TICKET

2025年7月25日(金)〜27日(日)
新国立劇場 オペラパレス

公演スケジュール

2025年7月25日(金)
2025年7月26日(土)
2025年7月27日(日)

チケット料金

S 席 29,000円
A 席 24,000円
B 席 14,000円
C 席 7,000円

*税込価格・全席指定
*全席学生割引あり(2,000円引き)
*車椅子席 29,000円/付添席 29,000円
*未就学児童入場不可

チケット販売
スケジュール

2025年2月15日(土) 10:00〜 最速先着先行販売
2025年2月25日(火) 10:00〜 各プレイガイド先行販売
2025年3月22日(土) 10:00〜 一般発売

VENUE

新国立劇場
オペラパレス

〒151-0071 東京都渋谷区本町1丁目1番1号

Alexander Ekman
振付・演出・衣装
アレクサンダー・エクマン
©︎Alexandre Tabaste
パリ・オペラ座からの招聘で新作を依頼されて、2017年に「PLAY」の初演が決まりました。「PLAY」の構想を最初に提示した時、当時、舞踏監督だったオレリー・デュポンは快諾してくれて、オペラ座チームにとっても比較的スケールの大きいパフォーマンスなので、スタッフたちも大興奮でした。時間の経過とともに、再演することで色褪せたり、今の大変な時世とのズレが生じるのではないかと心配でしたが、“遊び”は時代を超越する不変的な欲求だと確信しました。困難な世の中だからこそ、“遊び”が重要になっていくのです。
2024年の夏、パリ・パラリンピックの開会式の演出・振付監督を務めたことは、とても光栄なことでした。障害を持つ方たちが何を必要としているかを誠意を持って受け止め、社会にどのように変わって欲しいのか、彼らにとって何が大切なことを理解した上で、大事なテーマを私の創作力で奉仕させていただきました。その反面、自分自身の作品を創作する自由が、いかに大切なのかを実感して、“劇場”という古巣に戻って以前よりもさらに自由に創作に専念したいと思っています。全世界に向けて舞台を作る体験を通じて、創作の本質的な特異性が理解できたと思っています。
©︎Alexandre Tabaste
私はいつも多くの人が共感できるテーマを探しています。子供の頃は遊ぶことが楽しめたのに、大人になるにつれて少しずつ苦手意識が出てくることに疑問を投げかけて、話し合うきっかけを作りたかった。“遊び”というテーマそのものも奥深いのですが、“遊び”と“加齢”の関係もおもしろいと思うのです。両親を見ていると、歳を重ねるにつれ“遊び”が復活していて、いい意味で人生に対していい加減でいいんだって吹っ切れるようになっている気がします。私自身も歳を重ねてそう感じているで、今回の公演では個人的な歩みも反映をさせました。
緑のボールのシーンは、“遊び”のエネルギーに尽きます。あれだけのボールが降ってくると、まるで土砂降りの雨のような自然現象のようにも見えますよね。驚嘆はエンターテイメントの上で大切です。驚くことはとてもフラットな感情なので、観客の臨場感を引き起こすには良い手段です。初めてボールを舞台に降らせたとき、真剣に機械を操作していた技術スタッフ全員が5分もたたないうちにボールの中で飛び回っていて…。また色の選択には時間がかかり、ボールを緑にしたのは個人的に好きだし、“自然”とのつながりが強いからで、作品を象徴する色になりました。
Sketches Alexander Ekman ©︎Opéra national de Paris
全てが、ある種の調和が必要な絵画や巨大なパズルを完成させるのと似ています。音楽担当のミカエル・カールソンとは15作品ぐらい一緒に作ってきましたが、どの作品でも彼とはじっくり腰を据えて膨大な量の音源を聴き込んで、サウンドを選び出します。照明も、数パーセント単位の調整で結果が異なってきます。照明が5パーセント強過ぎただけで、うまくいかなかったこともあります。今回、第二幕のキャンドルのシーンは、完全に作り直したので、初演の時のものとはかなり違っています。
衣装については、個人的な美意識を反映させました。流行に左右されない正統派のアプローチが好きなので、登場人物の衣装は、お伽話にでてくるようなドレス、宇宙飛行士服など、定番的なスタイルが主流です。例えばスーツがわかりやすいのですが、ビジネスマンの格好をする場合、私たちは真面目に演じていますが、それもある種の“PLAY”ですよね。部長、振付家、記者など、みんなそれぞれ違う役割を演じているけれど、子供の頃はそれは“遊び”で、大人になって“仕事”と呼んでいるだけじゃないかと。
Sketches Alexander Ekman ©︎Opéra national de Paris
角のかぶりものですが、実はクラシックバレエでも角の生えた生き物は定番で、一度やってみたかったのです。多くの角を使うにはヘルメットが必要という流れになり、そういう防具をしなやかな女性の体と組み合わせて独特の美しさを表現したいと思いました。パワーの象徴である角のヘルメットをつけた、力強さの中にあるトゥに立った女性像によって、いつもとは違う手法で官能美を作りたかったのです。同時に、角を持つことで、動物の化身として遊べるのです。これも“遊び”の醍醐味のひとつです。
私がみなさんに届けたいのは、第二幕にも出てくるアラン・ワッツのメッセージに尽きます。それは、我々は人生を巡礼のように捉えがちで、指定の場所に辿りつくこと自体を目的としてしまう場合が多いのです。そうではなくて、音楽を聴くなど時間を楽しく過ごすことこそが大事だと、人生をミュージカルに例えるなら、音楽が鳴っているうちに、踊ったり歌ったりするべきだと、言っています。悩みがある時は、数時間忘れて、あまり深く思い詰めないことも必要だと私たちに呼びかけているのです。
©︎Alexandre Tabaste
「PLAY」という演目をパリ・オペラ座以外の場所で上演できること、そして今年の7月に東京公演を開催できることは、すごくうれしいです。日本の友人もたくさんいますし、日本の社会とクリエーションが大好きです。舞台事情も気になります。前回、時差ボケの中で歌舞伎を観たのですが、とても興味深かったです。まだ東京しか行ったことがないので、北陸とか自然の多いところを訪ねてみたいですね。「PLAY」を上演することで、コンテンポラリーバレエ・ダンス業界を活気づけることができるといいなと思っています。ぜひ、多くの日本のみなさんに観ていただきたいです。
アレクサンダー・エクマン:1984年スウェーデン出身。1994年から2001年までスェーデン王立バレエ学校、2002年から2005年までネザーランド・ダンス・シアター(NDT2)を経て、振付師としてキャリアをスタート。代表作「CACTI」「白鳥の湖」「TUPLET」「真夏の夜の夢」。2024年パリ・パラリンピックの開会式では演出・振付監督を担当。
José Martinez
パリ・オペラ座舞踊監督
ジョゼ・マルティネス
©︎Alexandre Tabaste
初めて「PLAY」が上演された時、私の周りで大変話題になっていました。緑のボールが印象的な動画やSNSを観て、この作品の複雑な構成をすぐに察して、パリ・オペラ座で鑑賞するのを待たずに、アレクサンダーに直接連絡しました。当時、私はスペイン・国立ダンスカンパニーの芸術監督でしたので、マドリードへの招聘を申し出るほどでした。そしてパリ・オペラ座の舞踊監督に就任した私は、ようやく再演を実現したのです。この現代的な作品が伝統と歴史のあるオペラ座ガルニエ宮で上演されることは、非常に興味深いことなのです。
アレクサンダーは振り付けに限らず、周りのあらゆる要素をバランス良く上手に組み合わせることに秀でています。ただ舞台に上がって踊るだけのバレエではなく、現代アートのインスタレーションのように舞台と観客を融合させていきます。それはまさに、ビデオアートとバレエの出合いから生み出される新たな芸術。完成度の高いショーを作ることができるからこそ、2024年パリ・パラリンピックの開会式の演出・振付監督を任されたのだと思います。
©Alexandre Tabaste
「PLAY」日本公演のオファーを受けた時、とてもよい機会だと思いました。パリ・オペラ座バレエ団は何度も来日していますが、クラシックバレエがほとんどです。コンテンポラリーというバレエの異なる側面をお見せできることは、私たちにとっても勉強になりますし、日本のみなさんもきっと発見があると信じています。今回のキャストは、私が事前に選出したオペラ座バレエ団のダンサーたちの中から、リハーサルを通じて、アレクサンダーによって配役が決定していきました。2024年12月〜2025年1月のガルニエ宮での公演のために選出されたダンサーたちが、日本の舞台に立つ予定です。
コンテンポラリーバレエでは、振付家自身の経験を表現することがあります。暗い作品が多い印象があるのは確かですが、「PLAY」は違います。初めてアレクサンダーがスタジオを訪れた時、彼はダンサーたちに「さあ、これから一緒に遊びましょう」と伝え、ダンサーたちは、投げ入れられた大きなボールと自由に戯れていました。多くの日本人は、舞台を観に行く時、ときめきたいと思うようですね。この「PLAY」はいきいきとした楽しい作品なので、きっと新鮮な触れ合い方ができると信じています。
©Alexandre Tabaste
芸術監督として感じていることは、今の若いダンサーたちは私たち世代とはキャリアの積み方への考え方が違うことです。彼らは自由な時間が欲しいし、自主的な企画や自分に合ったペースでの仕事を望んでいます。ですから、おもしろいプログラムを組んで挑戦を仕掛けて、彼らのモチベーションを維持することがとても大事だと感じています。パリ・オペラ座バレエ団らしい気品と優美さのフランス流派を保っていくことが大切なのです。
©Alexandre Tabaste
実は1991年ごろから毎年、日本を訪れています。少しずつ日本文化を開拓してきましたが、今では地下鉄は路線図を見て移動できますし、駅の表示もわかるようになりました。私は、常に進化し続けている東京が大好きです。特に原宿は気に入っています。初めて行った頃は日曜日に路上でバンドが演奏していましたが、今では開発が進んで光景が変わりましたね。昔、一度だけ沖縄でダイビングをしたことがありますが、今回は、札幌への日帰り旅行も計画しています。日本のみなさん、ぜひ「PLAY」を楽しみにしていてください。
ジョゼ・マルティネス:1969年生まれ。スペイン出身。1987年にパリ・オペラ座パレエ学校、1988年に入団。1997年から2011年までパリ・オペラ座バレエ団でエトワールを務める。2011年から2019年までスペイン・国立ダンスカンパニーの芸術監督、2022年からパリ・オペラ座バレエ団の舞踊監督に就任。
Calesta “Callie” Day
歌唱
カリスタ・“キャリー”・デイ
©︎Alexandre Tabaste
最初オファーを受けた時は何かの冗談かと思いました。当時の私はアメリカから出て海外でオペラを歌うなんて想像もしていなかったのです。そして2017年に「PLAY」のために初めてパリを訪れて、パリの食事やライフスタイルが期待以上に素晴らしかったのを覚えています。あれから時が流れて、その歳月の中でプライベートでは大切な人を亡くしたり、コロナに2回罹ったり大変なことだらけでした。2024年、ガルニエ宮での「PLAY」再演の初日、ノートルダム寺院が再開して、聖書でいう“安息年”でひとつのサイクルが完結された気がしていました。
©Benoîte Fanton/OnP
スプレーで拭いた霧が散るように、いつかは人生も立ち消えてしまいます。コロナで肺を痛めたので、過去の自分から半分の地点に戻ってこられただけでも、感謝の気持ちでいっぱいです。命の儚さを実感したことが、歌い方にも反映されていると思います。ヴォーカリストとしては、楽譜の精読や研究、マチネもありますので精神と体力の健康維持を大切にしています。私が歌う“With Reckless Abandon”(フナーフの登場)、“Children play in the rain”(緑のボールが降り注ぐ)、“This Is How I’m Telling It Now”(ダンサーたちが揃って登場)のシーンがとても好きです。
©︎Alexandre Tabaste
バラの香りを嗅ぐために足を止めることを忘れてしまったら、人生の醍醐味を見過ごしてしまうことになりますよね。この作品は過去、現在、近い未来を回帰させてくれます。さまざまな次元が共存している舞台なので、それを束ねるのが私の役割だと思っています。ある人は視覚的に、ある人は聴覚的に、また無言の空気感に刺激を受ける人もいるでしょう。「PLAY」から何を受け取るかは人それぞれです。解釈に正しいも間違いもなく、自由なのです。子供の頃の童心にかえって、オープンな気持ちで観ていただけたらうれしいです。
カリスタ・“キャリー”・デイ:アトランタ出身のシンガー。代表的なアルバムは「Hear My Prayer」。ミュージックビデオ「In Trouble」もリリース。
Xavier Ronze
衣装
グザヴィエ・ロンズ
©︎Alexandre Tabaste
コスチュームデザインはアレクサンダーとの共同制作でした。彼とはまず最初にメインテーマである「遊び」とは何かを考え、色やフォルムをデザインしていきました。彼の「衣装は全て常識を超えたものにしたい」という言葉をもとに、例えば巨大なドレス、道化師の鼻と頭と靴先、宇宙服のヘルメットや丸みを帯びたブーツなど、ボールのフォルムをテーマにアイデアをぶつけ合いながら作り上げていきました。第一幕は、ダンサーの足元をスニーカーにするなどスポーツウエアのようなイメージ。集団服はセットや床の色と合わせて白にフォーカスすることで、特定のダンサーのキャラクターを際立たせる演出を狙い、さらにトム・ヴィッサーの照明によって美しい舞台に仕上がったと思っています。
©︎Alexandre Tabaste
第二幕は大人の厳しい仕事場の世界を表す灰色で、制服を連想させながらも均一的な制服ではない、凝ったデザインを取り入れました。遠目にはブリーツに見えるスカートも実は色の濃淡をつけて折り目に見せていたり、灰色のシャツに重ねたネクタイをドレープングで再現するなど、ディテールに遊びやひねりがほどこされています。興味深いことに、職人さんたちに私のヴィジョンを伝えるために、折り紙とドレーピングに関する日本の書籍を参考にさせてもらいました。ですので、この衣装たちはある意味、日本に凱旋帰国できることになって光栄です。
©︎Alexandre Tabaste
今回、アレクサンダーから“フナーフ”(トナカイのような角のヘルメットを被った衣装)の数を初演より増やせるかのリクエストがありました。“フナーフ”はアレクサンダーが創造した架空の動物。ローラーブレード用のヘルメットをベージュに塗装して、いろいろ試作して、最終的に私の故郷であるノルマンディの梨の木を使っています。日本には丁寧に梱包して船で運ぶ予定です。日本とフランスがこうして恋愛関係を結べる東京公演はとても楽しみです。「PLAY」が日本のみなさんにたくさんの喜びを運べることを祈っています。
グザヴィエ・ロンズ:エスモードパリ学校を経て、1991年にパリ・ガルニエ宮のアトリエに入社。2017年の「PLAY」初演時からアレクサンダー・エクマンと共に衣装を担当。
Mikael Karlsson
音楽
ミカエル・カールソン
©︎Niklas Alexandersson
「PLAY」の音楽作りで意識したのは、遊び心、リズム、迫力がある現代的なサウンド。感情に強く訴えかけ、喜びからもっと暗く激しく、ソウルフルで感動的に、そして最後には軽やかさへと導き、心がとてつもなく揺さぶられる道筋を作ることでした。「PLAY」では、それぞれの演奏パートの即興があり、ミュージシャンたちとの自由で楽しいコラボレーションがたくさん生まれました。7月の日本公演には、基本的には2017年のパリ・オペラ座での初演と同じミュージシャンが参加します。彼らが自分のパートを気に入って楽しんで演奏できることが大事なのです。
アレックス(アレクサンダー・エクマン)との最初の出会いは、彼がシーダー・レイク・コンテンポラリー・バレエ団と仕事するためにニューヨークを訪れた時でした。当時バレエ団の芸術監督だったブノワ・スワン=プファーから、アレックスに作品を依頼していることは聞いていましたが、実際に私たちを引き合わせてくれたのは彼の妹のアンナ。お兄さんとの夕食に誘われ、会ってみたらそのお兄さんが他でもないアレックスだったのです。
数年間、アレックスとは純粋に友達関係でした。彼の作品は大好きでしたが、無理に介入したりしたくなかったのです。ある日、いつものように街に出かけて夜ふかししていたら、私の音楽を聴きたいと言ってくれたのがきっかけで仕事をするようになりました。2012年にスェーデン王立バレエ団「Tyll」の全スコアを依頼されたのです。彼は私の人生の中で最も重要な人物の一人であり、音楽に対する見方を完全に変えてくれた人物です。
©︎Hans Nilsson
「PLAY」のようなスケールの大きい作品の音楽では、まず2週間ほど一緒にドラフトを作ります。アレックスからアイデアの説明を受け、それに合うサウンド世界を探っていきます。演出と音楽を区別せずに進める中で、納得のいかないものを切り捨てることは恐れません。リハーサルが始まると「これをもう10秒増やして」「ベースをもっとカッコよく」など即時に具体的な指示があります。アレックスは音楽的な人なので本当に刺激になります。
カリスタ・“キャリー”・デイの声は、私にとって純粋な音楽そのもの。力強く、美しく、遊び心があり、信じられないほど感動的で、それでいて全く自然な歌声は唯一無二です。極めて高い技術を駆使して、自由気ままに歌うことができる、その歌唱は信仰と深く結びついています。彼女の起用は、YouTubeで「Hear my pray」を教会で歌っている動画を見て、アレックスに伝えたのがきっかけでした。彼女の奉仕の心と音楽が私たちを祝福してくれるのです。
©︎Benoîte Fanton/OnP
「PLAY」は観客を魅了するアレクサンダーの力の証です。ワイルドな体験であり、壮大なショーです。舞台を観た友人たちはみんな、満面の笑顔で帰っていきます。ジェットコースターのような体験ですが、幼少期を終えてからも我々が遊びと喜びを見つけられるための指標を指す内省的な作品でもあるのです。ダンサーとミュージシャンたちは究極のベストメンバー、東京公演では、終始退屈しないことをお約束します。
ミカエル・カールソン:1975年スウェーデン出身。作曲家。主にダンス、バレエ、オペラ、演劇のための作曲を手がける。2010年より、振付家・アレクサンダー・エクマンの作品「Play」「Midsummer Night's Dream」「Escapist」「Hammer」「A Swan Lake」「Cow」「Frailty of Man」など10本の楽曲を提供している。
Frédéric Vaysse-Knitter
ピアノ
フレデリック・ヴェス=クニッテル
©︎Alexandre Tabaste
いちばん大切にしているのは、エネルギーと熱意をこめてピアノを弾くことです。作曲家のミカエル・カーソンとは、一緒にピアノパートを書き直し、音楽的一貫性を向上させることに努めました。そうすることでダンサーたちが最高の踊りができる環境を作り、観客と夢を共有できるのです。
「PLAY」は演奏場所がオーケストラピットではありません。ダンサーたちが精力的にセットのドアを叩くように閉めたりする、地上より数メートル高いプラットフォームで演奏する、というのは滅多にない経験でした。舞台全体や彼らの動き、特にラストのダンサーと観客の掛け合いのシーンを見渡せるのがよかったです。
©︎Alexandre Tabaste
舞台演出が斬新なのはもちろん、テーマが人々の日常でもあることも、この作品が支持されている理由だと思います。私も仕事に対する姿勢やルーティンについて考えさせられました。結論としては「遊びましょう!」です。東京公演はとても楽しみです。今まで日本を8回訪れていて、個人的に最も関心の高い国。日本の観客のみなさんの反応は独特で、いつも早くステージで再会したいという気持ちに駆り立てられます。「PLAY」を観た人は絶対にその魅力の虜になると確信しています。
© Benoîte Fanton/OnP
フレデリック・ヴェス=クニッテル:1975年生まれ。ポーランド出身。フランス国立オペラ管弦楽団をはじめオーケストラで演奏。
Bernard Connan
装飾制作
ベルナール・コナン
©︎Alexandre Tabaste
衣装担当のグザヴィエ・ロンズと密に連携して、アレクサンダーのイメージに合う、ダンサーが動きやすいものを作ることに専念しました。普段のパリ・オペラ座の公演で試みたことがない挑戦が「PLAY」ではできたのです。個人的には角のヘルメットを被った“フナーフ”のシーンがとても気に入っています。甘美でエレガントながら、奇妙さを醸し出す雰囲気。ファンタジーの世界で想像力を暴走させていて、ボールや髪の毛だけで作られた衣装も登場しますが、その分私たちには新たな扉が開かれて、いろいろ実験ができる良い機会でした。
©︎Alexandre Tabaste
メインキャラクターではないのですが、もっとも苦労したのは宇宙飛行士です。特にヘルメットは、農家の殺虫剤対策の保護用のものを購入して、そこから大きさを変えて表面にできるだけ丸みをつけたり、ライトを取り付けるなど工程が多く、時間のかかる作業でした。また、足だけ見える大きな球体を被る衣装については、球体をできるだけ軽く完璧な形で丸くするのが大変でした。実は初演時は極小の穴が2つだけだったのですが、再演からはダンサーの視野を広くするために、球体内に小型カメラを設置して動きやすくしているのです。
©︎Alexandre Tabaste
ボールが降ってくるシーンは音もすごいですし、匂いが漂ってくる気がします。舞台はダンサーにとって聖域のような場所ではあるのですが、この作品では観客に開かれています。しかも陽気に交信できるので、ただ観ているだけでなく、手を叩いて応じながら参加できるのです。「PLAY」には舞台と観客との乖離をなくすという“反則”があり、この開放感はたまらないと思います。誰もが魅了される文化を持つ日本のみなさんが、いったい「PLAY」にどんな反応をするのか、観客席に紛れて観てみたいです。先ずは、ぜひチケットをゲットしてくださいね。
ベルナール・コナン:装飾制作。パリ・オペラ座に就職して30年以上、装飾&小道具アトリエ責任者。
Eric Jardel
舞台制作
エリック・ジャデル
©︎Alexandre Tabaste
アレクサンダーに初めて会ったのは、初演の2017年。その当時の私は舞台機構操作を担当していました。今は舞台管理全般を任されています。いちばん時間がかかるのは技術チームとの事前の擦り合わせとスケジュール調整。そのためには、全ての舞台配置を整えて、さらに各チーム作業が円滑に運ぶように工夫します。最もやりがいを感じるのは、リハーサルから初日までの期間です。技術チームと芸術チームが意見を交わし、舞台装置の扱いで避けては通れない、さまざまなトラブルを解決していくプロセスが好きです。
©︎Alexandre Tabaste
「PLAY」で個人的に気に入っているのは、やはりバトンから舞台に降り注がれた緑のボールの中をダンサーたちが踊るシーンです。オーケストラピットと舞台をしっかりと密閉してボールの漏れを回避することと、公演後のボール回収も私たちチームの大切な役目です。好評を博した演目がガルニエ宮で再演され、さらに2025年に東京公演を行うことは当然です。パリ・オペラ座バレエ団は普段からクラシックでの遠征が多いので、我がバレエ団の新たな一面と、ノウハウを日本の皆さんにお見せできるのはとても良い機会だと感じています。
©︎Alexandre Tabaste
エリック・ジャデル:2003年にパリ・オペラ座入団。2016年より舞台技術監督。
Dancers
パリ・オペラ座バレエ団
ダンサー
©︎Alexandre Tabaste
Silvia Saint-Martin
シルビア・サン=マルタン
アレクサンダー・エクマンはいつも上機嫌でユーモアがありアイデアが豊富なので、稽古場はいつも活気に満ちていました。子供や無邪気な生き物になりきって、何かを初経験する様子を想像をするようにと指示があり、私たちは道具を使いながら、空間を自由に動き回りました。
おかしな身振りや無意味な行動など、その光景は“クレイジー”で巨大な創作空間でした。それは、間違いなくユニークで楽しい体験でした。
私は2017年の初演から参加していますが、再び自分が創作した役を演じられることがとてもうれしいです。本番前はいつもパ・ド・ドゥの振り付けを一通りや踊り、完全に役になりきった状態で本番に挑んでいます。自発性を体現するのに一番大事なことは、視線と動きのリズムだと思っています。日本公演では私たちダンサーの表現力が、オーディエンスの心に響く公演になると確信しています。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
シルビア・サン=マルタン:2002年パリオペラ座ダンス学校に入学。2008年にパリオペラ座バレエ団に入団。2020年、プルミエ・ダンスーズに昇格。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
Florent Mélac
フローラン・メラック
これほどまでに個性的な作品は他にはない、唯一無二であることが「PLAY」の魅力です。特に好きなのは、第二幕の冒頭で繰り広げられる“ループ”の場面。私自身、作業として役作りをするというよりも、与えられた役は常に完全に身に投じて演じたいと思っています。日本のみなさんが、この作品に対してどのような反応をされるのか、今からとても楽しみです。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
フローラン・メラック:2005年にパリオペラ座バレエ学校に入学。2010年にパリ・オペラ座バレエ団に入団。2024年にプルミエ・ダンスールに昇格。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
Caroline Osmont
キャロリーヌ・オスモン
私の役の方向性が明確になったのは、リハーサル最後の1週間でした。みんなで変顔を試していたら、私のしかめっ面を見たアレクサンダーが「そうだ、わかった。君は常にみんなとは正反対の存在でいなければならないんだ!」と。キューブに立って、空想や自由のない、規律された大人の世界を表現してほしいと言われ、振付よりも先に人物像について話し合うことで、キャラクターが出来上がっていきました。
バレエ講師からのアドバイスで、イメージしたのは女優です。今回は「プラダを着た悪魔」のメリル・ストリープの達観した感じを醸し出せるよう、日々心がけていました。夢中になって演じていたら、何かが吹っ切れてきて、自分の中でも徐々に進化の手応えもありました。東京公演は夏休みの始まり、世代を超えて家族みんなで観てほしいです。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
キャロリーヌ・オスモン:2004年パリオペラ座ダンス学校に入学。2011年にパリオペラ座バレエ団に入団。2020年にスジェに昇格。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
Claire Teisseyre
クレール・テセール
舞台上だけでなく、それ以外の時間も他のダンサーたちと一緒に過ごせたのは有意義だと感じました。本番前のウォームアップ後、ダンサー同士で体を動かしてグループの一体感を作ることができる「PLAY」は、私にとって特別です。コンテンポラリーバレエに不可欠な自発性を育むのは、常に寛容な心構えです。このユニークな作品からは踊りの楽しさを学んでいます。さまざまな嗜好の人たちにも満足してもらえると思っています。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
クレール・テセール:2024年パリ・オペラ座バレエ団入団。2025年にコリフェに昇格。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
Lisa Gaillard-Bortolotti
リサ・ガイヤール=ボルトロッティ
私が好きなのは間違いなく第一幕の“フナーフ”のシーンです。これだけ力強い生き物を表象するのに、女性が起用されるのは珍しいですし、パワフルで自由でありながら、結束力のある集団を構成しているのが何よりも魅力的だと感じています。実は初演から観客として「PLAY」を観ていました。最新版で初めてこの作品に参加できて、“フナーフ”を踊ったら、無敵な気分になれました。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
リサ・ガイヤール=ボルトロッティ:カドリーユ。2015年パリ・オペラ座バレエ学校に入学。2020年パリ・オペラ座バレエ団に入団。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
Baptiste Bénière
バプティスト・ベニエール
稽古はいつもスムーズに行われます。アシスタントのアナ・マリアが振り付けを我々に伝えて、エクマンがリハーサルを進めていくのです。
遊びから真剣な踊りに移行する「PLAY」は、周囲のダンサーたちのエネルギーを糧にしながら取り組めます。いつも本番前は十分にウォームアップをして外界を遮断して集中します。ダンサーの個性を活かして、コンテンポラリーバレエ特有の自発性を探ることができる作品です。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
バプティスト・ベニエール:カドリーユ。出演作品『ドン・キホーテ』サンチョ・パンサ役、クリスタル・パイトの『シーズンズ・カノン』やピナ・バウシュ『青髭』など。
©︎Alexandre Tabaste
©︎Alexandre Tabaste
綾瀬はるか
俳 優
©︎Alexandre Tabaste
鬼ごっこ、かくれんぼ、缶蹴り...特にボール遊びが好きで、わんぱくだった幼い頃の記憶が蘇ってきました。印象に残ったのは、やはり夢が詰まった第一幕。特に緑のボールが土砂降りのように天井から降り注ぐシーンです。私が観劇したバルコニー席からはボールが敷き詰められた緑のプールが見渡せて、舞台を駆け巡り楽しそうに踊っているダンサーたちを観ていたら、一緒に波打つボールの中にダイブしたい気分になりました。
©︎ Benoîte Fanton/OnP
パリ・オペラ座バレエ団のダンサーたちの身体表現はほんとうに素晴らしかったです。骨、関節、筋肉の全てを熟知している人たちによる鍛錬の先にある動きは、ダイレクトにエネルギーを与えてくれました。メインダンサーのルー・マルコー=ドゥルアールが開演前に舞台端で踊っている姿もすてきで。以前NHKの「精霊の守り人」という作品に出演した際、監督から先ずアクションシーンから撮りましょうと言われたことを思い出しました。身体から入っていくと自然に心が動き、頭で考えていることを超える瞬間があります。
©︎Alexandre Tabaste
そして、私は勝手に“宇宙(空想)の時間”と名づけているのですが、宇宙飛行士、道化師、プリンセスラインのドレスの人などさまざまな登場人物が出てきたシーンも好きです。その後の、角のヘッドピースのダンサーたちの手足の先の細部にまで意識が宿っている様子にも感動しました。素材やフォルムがおしゃれな衣装、第二幕で男性の顔がアップになる映写など演出や仕掛にセンスの良さが際立っています。振付家のアレクサンダー・エクマンさんは今までの人生で何を大事にして生きてきたのだろうと、興味がわきました。
©︎Alexandre Tabaste
以前オペラ・バスティーユで『白鳥の湖』を観たことはあるのですが、今回ガルニエ宮での観劇は初めて。「カフェ・ド・ラ・ペ」でお茶をして気分を上げた後にオペラ座へ。迫力のある大階段や天井画のシャガールの絵(「夢の花束」)、おしゃれを楽しむ年配のご夫婦など観客席の雰囲気も魅力的でした。
これまでパリ・オペラ座でしか上演されたことのないという「PLAY」が、この夏、そっくりそのまま東京にやってきます。私も次は1階席で、ダンサーと観客が一体となり交流できるラストシーンに参加したいです。初の海外公演となる「PLAY」の日本公演を、ぜひ体験してみてください。
©︎Alexandre Tabaste
あやせはるか:俳優。NHK 大河ドラマ「べらぼう」でナレーションを担当。映画「野生の島のロズ」で主人公のアシスト・ロボット「ロズ」の日本語吹き替えを務める。写真集「ハルカノイセカイ」第五弾が発売中。
石橋静河
俳 優
©︎Alexandre Tabaste
ほんとうは誰もがただ子供の頃に戻って遊んでみたいし楽しいから踊りたい、そんなことを気づかせてくれる作品でした。みんなで踊ったら平和になるさって、言えない厳しいご時世になってしまっていますが…。大量の緑のボールの中をダンサーたちが走ったり、転がったり、追いかけっこしたり。そんなシンプルな動きだからこそ、パリ・オペラ座バレエ団で訓練を受けたダンサーたちの肉体の美しさが際立ち、彼らが解放される姿を観ているのはとても興味深かったです。
シネマのようなオープニングの演出も好きです。音楽も劇伴みたいに感じましたが、カリスタ・“キャリー”・ディの歌唱シーンは“音楽”として成立している。座席の後ろからも音が流れてきて包み込まれるような音響もよかったです。オーケストラピットを舞台の一部にして、その代わりに演奏家たちが観客席から見える舞台上にいるのも新鮮でした。同時多発的に舞台上でいろんな登場人物が出てきて。鑑賞後、人によって印象に残るシーンが違うのもおもしろく、「スコトーマ」の法則(人は無意識のうちに自分の見たいもの以外を遮断する)を思い出したり。
©Alexandre Tabaste
今回、振付家のアレクサンダー・エクマンさんと対談させていただきました。伝統あるパリ・オペラ座で革新的な挑戦をする勇気を持ちながら、自分のアーティスト性を譲らず、尚且つとても物腰が柔らかい。私のいろんな質問にも気さくに答えてくださり、彼の本質はどこなんだろう!?と、とてもミステリアスに感じました。「PLAY」という作品は、スペクタクルな舞台を作ろうよ!ではなくて、ミクロのことが拡大しながらハプニングを面白がっている。ダンサーも一緒になってみんなで作りあげていったクリエイションの過程もきっと楽しかったはずです。
©︎Alexandre Tabaste
実は今回、16歳で初めてバレエの聖地パリ・ガルニエ宮でクラシックを観て以来のオペラ座での観劇でした。始まる前にオペラ座のツアーに参加。「グラン・ホワイエ」の信じられないぐらいのきらびやかな装飾、かつて馬車が乗りつけたという場所、観劇以外にも社交の場だったという大階段など美術館のようでした。
©︎Alexandre Tabaste
こう観るべき、どう観るかを追うのではなく、自由でいいんだと感じられる、モノの見方が変わる作品。ただ「おもしろかった」だけに終わらない「PLAY」が東京で開催されるのが楽しみです。
©︎Alexandre Tabaste
いしばししずか:俳優。NHK「リラの花咲くけものみち」に出演中。「PLAY」ではアレクサンダー・エクマンとパリ・ガルニエ宮で対談。詳しくはBRUTUS.jpの「PLAY」特集で。
柄本時生
俳 優
©︎Alexandre Tabaste
幕が閉まっている状態で舞台にトランペットやサックスなど管弦楽器が並んでいて、メインダンサーのルー・マルコー=ドゥルアールが踊り出し、いつの間にかライトが1筋照らされ、スタッフロールが映写される。客席についた瞬間からもう心奪われていました。ルーの踊りを観たら「すみませんでした」って。終盤のカリスタ・“キャリー”・ディの歌の盛り上がりまでずっと驚いて口あんぐりか笑顔。持論なのですが、大人が感動すると泣くのではなく、無限な可能性を感じて自然に笑ってしまうのではないかと。緑のボールが降ってきたシーンも爆笑していました。
アレクサンダー・エクマンさんの絶対的なセンス。第一幕と第二幕でそれぞれ白い風船を使ったことで、ラストで観客が動きやすくなったのは、すごい演出手法だと思いました。日本でも舞台で風船は使用されることはあってもやはり難しい。小道具ひとつとっても品性を感じます。第一幕、木が1本、奥に扉がある美術もよかったです。他にも女性ダンサーのステップに合わせて床を叩く音。これが“音楽”だって教えてくれる。観客に耳を立てさせる。壮大な音楽もいいけれど、衣擦れや足音を聞いていた遠い時代の記憶、足音って大事だよねって気づかせてくれました。
©︎ Benoîte Fanton/OnP
ダンサーのルーはエクマンさん自身じゃないのかなと。「君は僕だ、任せた」って。エクマンさんが幼少期に何を意識していたのかを、ルーに託していると感じました。今回、渡辺大知くんと一緒に観劇したのですが、二人で「やばいよね、あそこ見た?やばいやばい」ってギャルみたいな会話ばかりしていて。彼とはそこの感覚がわかり合えるんです。東京で二人で飲んでいて「コンテンポラリーダンスは身体が楽器」と言っていた彼の言葉に、「PLAY」を観てなるほどね、と。僕も大知くんもとにかくずっと笑っていました。
©︎Alexandre Tabaste
おしゃれをしてワクワクしながらオペラ座に向かっていたら、昔、祖父母が歌舞伎座に行く時は和服で着飾っていた光景を思い出しました。ガルニエ宮の大階段を見たとき、これから観る側なのになぜか自分が出演する気分にもなったりして、特別な場所に心が躍ってしまって。
©︎Alexandre Tabaste
さて、東京公演です。スマホでは伝わりづらいので、劇場で観てほしいです。実は今回、生まれて初めてスタンディングオベーションをしました。職業柄、今までやってこなかったのですが、「PLAY」を観たら正直もういいだろうと思えて。本当に衝撃を受ける作品、ぜひご覧になってください。
©︎Alexandre Tabaste
えもとときお:俳優。「錦糸町パラダイス〜渋谷から一本〜」ではドラマの企画にも携わり幅広く活躍中。
湯浅亜実 / AMI
ブレイクダンサー
©︎Alexandre Tabaste
すごくおもしろかったです!先ず、ブレイキンの競技では音発信で踊りがスタートするのですが、「PLAY」は開演前から無音の中でのメインダンサーのパフォーマス、そして幕が開くと同時に音楽が流れるのが新鮮でした。その後もルー・マルコー=ドゥルアールの動きには目が離せませんでした。印象的だったのは、女性ダンサーのステップに合わせてマイクを叩く音、ダンサーたちが緑のボールの中を走るとたつシャーシャーという音…。身体を使って踊っているからこそ生まれる音がある、“音が見えるパフォーマンス”でしたね。
©︎ Benoîte Fanton/OnP
以前、劇場経験のあるB-boyの友人に「なんでダンスに音楽が必要か」と聞かれたことがあり、ゆるい回答しかできなかったのです。彼が言っていた「大人になると無意識にリズムをつけて歩くようになる、全ての動きにリズムがある」という意味が、この作品を観てしっくりきました。カクカク踊って、足が伸びてるよりも曲がっている方がカッコいいブレイキンと、ダイナミックな中に繊細でしなやかなバレエダンサーの動きとでは真逆の美しさではありますが、“動き”でストーリーや感情を伝えるという共通点はあります。
©︎Alexandre Tabaste
例えば第二幕では同じ動きを繰り返すそのループで日常生活を表現したり、ダンサーの表情で気分がわかることなど、言語が通じなくても、動きによって伝わるのがダンスのいいところ。“動く芸術”なんだなと改めて感じます。他にも、衣装で瞬時に場面の意味がわかりました。第一幕ではダンサーたちはカジュアルなのに対して、第二幕ではグレーのスーツやシャツを着ている。そこで私はなるほど、第一幕は子供時代、第二幕は大人の世界だと気づき、答え合わせができたのです。
©︎ Benoîte Fanton/OnP
自分は観客なのになぜか舞台の世界にどんどん入っていく感覚がありました。男女のダンスシーンに集中していたらいつの間にか奥で男性2人がパフォーマンスをしているなど、なんだろうなんだろうって、同時に起こっているさまざまことを観たいと途中から思い始めて、頭の中が忙しかったです。ラストシーン、前方を気にしていたら後ろからボールが飛んできたり!
今回母と一緒に観劇したのですが、観劇後にあれこれ話す楽しさ含めての「PLAY」なのだと思いました。とにかくもう1度観たいので7月の東京公演を待ち望んでいます。
©︎Alexandre Tabaste
ゆあさあみ:1998年生まれ。2024年パリオリンピック、ブレイキン金メダリスト。GOOD FOOT CREW所属。
渡辺大知
俳優・ミュージシャン
©︎Alexandre Tabaste
目と耳を駆使して、脳みその使ってないところを使いまくって、身体が喜んでいる実感に溢れていました。言葉がなくてもここまで語れるのかという自由さに圧倒されて、すご過ぎてずっと笑っちゃってました。言葉にならないんだけれどぼんやりもしたくなくて、頑張って自分の中で言葉を見つけようとする時間が幸せで。パリに行く前に、リスペクトの意味も込めてアレクサンダー・エクマンさんのリサーチをしたのですが「PLAY」が始まったとたん、あーもう身を任せようと思いました。
©︎ Benoîte Fanton/OnP
一緒に行った柄本時生くんと、観劇前日はご飯に行ったりプリクラ撮ったりして、あえてオペラ座には近づきませんでした。そして当日、二人でお気に入りの服を着て出かけて。劇場に入るとお互いキョロキョロしていてました。シャガールの天井画など、もう360度楽しくて。すでに踊っているメインダンサー・ルー・マルコー=ドゥルアールの身体表現は釘付けになるほどすごかったです。舞台と現実の世界が地続きで驚きました。終演後の帰り道で、時生くんが「これを観た人が普段人間をどう見ているか、が出る舞台だね」と言っていたのが印象的でした。
©︎Alexandre Tabaste
第一幕、ステップに合わせてマイクで床を叩いて相手を探り合ったり、スーツの人物の後についていくダンサーたちのズレで生じる子供〜青春時代特有の“コミュニケーション”の様子がよかったです。第二幕は朗読や天井から吊るされている四角のキューブの見え方も変わり、求められることにどれぐらい喰らいついていけるかや虚無感がある大人の世界を描いていて。でもその秩序の中で喜びを見い出す姿もすてきです。成熟した寂しさも感じられる第二幕があるからこそ、あのカリスタ・“キャリー”・ディの歌で、全てを包み込んであげましょう、という流れが効いていたと感じましたね。
©︎ Benoîte Fanton/OnP
言語を身体に置き換えて語ろうとしているコンテンポラリーダンスには、もともと興味がありました。僕の中で“言葉と音のない楽器”だと理解していたので、身体を使って言語化されたパフォーマンスに心から共鳴できました。舞台自体は動かないので、その中でいかに多角的に見せていくかが大切。風船、丸いフォルム、色などを使い、時代感覚やジェンダーについての表現など、レイヤーの多さがすばらしかったです。これが日本で観られる!?革命が起きるでしょ、と思っています。「PLAY」には日本にちょうど“ないもの”がある。東京で開催、きっとおもしろいことが起こるに違いないです。
©︎Alexandre Tabaste
わたなべだいち:俳優・ミュージシャン。2009年映画「色即ぜねれいしょん」。2024年かNHK大河ドラマ「光る君へ」に出演。ロックバンド「黒猫CHELSEA」ボーカル。